• 何を書けばいいの?

    読書感想文って、何をどんなふうに書けばいいんだろう……。

    もちろん本を読んだ感想を書くのです。

    ……沈。

    感想とは、

    「心に浮かんだ思い。感じ。所感。所懐。感懐。」

    (「広辞苑・第七版」岩波書店 より)

    とあります。

    では、何を書くのか、どんなふうに書くのか、をご紹介します。

    3つのポイント

    ・第一印象について長く深く掘り下げない。

    ・全体を捉えて大きなまとまりにしようとしなくて良い。

    ・自分の体験を織り交ぜながら書く。

    これだけ押さえておこう!

    それでは、3つのポイントについて詳しく解説します。

    ・第一印象について長く深く掘り下げない。

     本を1冊読み終えたら、おもしろかった、ドキドキした、悲しかったなど、何かしらの印象を抱きますよね。それは大切なことです。ただ、その第一印象についてあまり長く語るのは読み手を飽きさせることになりかねません。

    例えば、(以下、架空の物語の感想文です)

    「とてもおもしろかったです。とくに中野くんが下級生たちの前でおどり始めたところがおもしろかったです。突然のできごとに下級生たちがポカンと口を開けているところもおもしろかったです。中野くんが途中でゴールポストに足をぶつけて痛がっているところもおもしろかったです。それでも、あいたたあいたたと言いながら変なおどりを続けている様子に、私は何度も笑いました。」

    という感想文を書いたとしましょう。読んでみていかがでしたか? おもしろかったのはよく分かりましたが、そんなに何度もおもしろかった気持ちが表現されていても、ウーン、それから? と感じたのではありませんか?

    では、次のような表現だったらどうでしょうか。

    「中野くんが下級生たちの前でおどり始めたとき、おかしくて笑ってしまいました。そして私も下級生たちと同じようにポカンと口を開けてしまいました。でも、中野くんがおどり始めたのには訳がありました。パスをミスした親友が下級生たちに責められないように、みんなの注意を自分に引き寄せるためでした。中野くんは優しくて強い人だなと思いました。」

    これでしたら、おもしろくて笑ってしまった→中野くんの心情を察した→自分が抱いた思いを表現した、という流れになります。本を読みながら物語の情景を想い描き、自分自身の心境の変化も表現できました。その感想文を読んでいても飽きません。

    ・全体を捉えて大きなまとまりにしようとしなくて良い。

    本を読み終えたら、全体としてどんな印象を受けたか振り返ってみましょう。ひとつの物語の中では、何度も場面が移り変わり、登場人物がさまざまなことを体験し、心も変化したことと思います。

    その全体を捉えて、「この本を読んで私はこう思いました」と書こうとすると、書き手自身の考えがまとまらず、つかみどころのない感想になってしまいます。また、物語のあらすじを追いながら「この場面ではこう思いました」「次の場面ではこう思いました」と書くと、感想文の読み手はまるで物語の紹介文を読んでいる気分になり、あなたの心の中を知ることができません。

    ですから、感想文を書くときは、1冊の本を読んだ中でいちばん感動したところ、あなたの心がいちばん動いた場面に的を絞りましょう。それは決してそのお話がいちばん盛り上がる場面でなくても構いません。読んでいてあなたがグッときたところに決めましょう。できればそのグッときた場面からあなたが何かを感じた、共感を得た、そんなシーンがよいでしょう。大きなできごとじゃなくても、グッときた対象が主人公でなく脇役の一人だったとしても大丈夫です。本を読み終わった後も、あなたの心に残っている場面を選びましょう。もしかしたら、心に残っている場面が「どうしてこの人はこんなことしたんだろう(言ったんだろう)」と疑問を抱いた場面かもしれません。それなら、なおGoodです。そこからあなたの想いを展開していきましょう。

    ・自分の体験を織り交ぜながら書く。

    本を読んでグッときた場面というのは、おそらくあなた自身にも似たような経験があるのではないでしょうか。友だちとのケンカ、絶体絶命のピンチ、大切なものを失った、心温まる贈り物、などなど。そんなとき、あなたはどうしましたか? 気持ちをうまく言葉にできましたか? 自分の心に正直な行動がとれましたか? そして、本の中の登場人物はどうしましたか? 本の中の人物と、それを読んだあなた自身とを比べてみましょう。

    あなたと本の中の人物が同じ行動をとった場合、「本の中の人物の気持ちがよく分かる、なぜなら〜」という流れができてきますね。あなたと本の中の人物が同じ行動をとった場合でも、その時の気持ちや周囲の反応まで同じだったとは限りません。すると「私にも似たような経験がある。本の中の人物はこんな思いでいたけど、あのとき私はこういう思いで行動した」という書き方で展開することができます。

    一方、あなたと本の中の人物がまったく反対の行動をとった場合も、違った形で展開することができます。「本の中の人物はこう考えたけど自分はこうだと思う」とか「私には本の中の人物と同じように行動することはできなかった、なぜなら〜」とか。

    先ほど書いたように、あなたの心に残ったのが「どうしてこの人はこんなことしたんだろう(言ったんだろう)」という場面だった場合は、もっと違う形で展開しましょう。「本の中の人物はどうしてこういう行動をとった(とれた)のだろう。私だったら〜なのに」「どうして私はあのときあんな行動をしてとってしまったのだろう。本の中の人物は迷わずこういう行動をとることができて本当にうらやましい」など。

    以上のように自分の想いを展開することができると、読み手の心を飽きさせず、本を読んであなたが感じたことや、そこから引き出されるあなたの世界をもっと知りたいと思わせることができます。

    というか、読み手にそう思わせたいから、前々回の『何を読んだらいいの?』の中の「本の選び方 その4」で【自分の体験した事柄と似ているお話を選ぶ】を紹介したのです。それも、経験した「出来事」よりは「気持ち」が重なると、とても深い内容の感想文を書くことができます。