• 何を読んだらいいの? その2

    前回に続いて、本の選び方をご紹介します。

    その3【過去の受賞作品で読まれた本から選ぶ】

    どんな本が自分の学年にふさわしいのか分からない、書店や図書館に行ってもどれを手にとったらいいのか見当もつかない、そんなあなたは過去の受賞作品で読まれた本を参考にすると良いかもしれません。各種読書感想文コンクールのサイトにはこれまでの受賞作品が読まれた本とともに紹介されています。優秀な賞を受けた方が読んだ本が優れた本だとは必ずしも言い切れませんが、読んで何かしらの思いを抱ける本である可能性は高いと思います。サイトを閲覧するときに気をつけたいのは、そこに紹介されている他人の読書感想文をじっくり読んでしまわないことです。人の感想を読んでしまったら、どうしてもその内容にとらわれて自分の本当の思いを形にできなくなってしまいますから。ザッと目に入れてあらすじ程度が分かったら、そこから先は自分で本を手にして読むようにしましょう。

    また、その本をAmazonで検索すると、下の方に「よく一緒に購入されている商品」や「こちらもおすすめ」のコーナーがあります。ここには似たようなカテゴリーの本が紹介されていたりするので、誰かが受賞した本を真似するようでちょっと気がひけるという方は、そういう探し方もアリだと思います。

    その4【自分の体験した事柄と似ているお話を選ぶ】

    いろいろと試し読みしてみても、どうしても運命の一冊に出会えないという方に、この方法はオススメです! 運命の一冊に出会えない方だけ出なく、実は全ての皆様にオススメなのがこの方法です。私はおそらく、この方法がいちばん感想文を書きやすいのではないかと思います。

    「自分の体験した事柄と似ているお話を選ぶ」とは・・・

    例えば、あなたが過去に、街で困っている人を見かけたのに周囲の目が気になって手を差し伸べることができなかった経験をしているとします。あるいは、周りの人たちの偏見やうわさ話にとらわれてはいけないと頭では分かっているのにいざという時に自分の信念に基づいた行動ができずにいたことがあるとします。そうしたら、そういう内容の本を探すのです。例えば「ヨンイのビニールがさ」(ユン ドンジェ・岩崎書店・2006)などいかがでしょう。大型絵本の部類に入ります。絵本ですから読みやすく、しかし中身が濃いので書こうと思えばしっかり深い内容の感想文が書けるので、3〜4年生以上の方にお勧めします(あくまでも個人的意見ですが)。あらすじは詳しく書きませんが、人々の偏見や周囲の目に負けそうになった女の子が、最後には自分の心に正直に行動し清々しい気持ちになるお話です。誰にでも似たような経験がある、そんな内容の絵本です。ちなみに、ここで説明している内容は、感想文ブログなどで紹介されている「自分の興味・関心がある分野の本を選ぶ」とは異なります。例えば、サッカーが大好きな子が「サッカーボーイズ 再会のグラウンド」(はらだ みずき・角川つばさ文庫・2010年)を読んだからといって誰もが深い感想を抱けるとは限りません。このお話は、サッカーを読んでほしいお話ではなくて、挫折にどう向き合うかを読みとり、感じとってもらいたい物語だからです。単にサッカーに興味があるだけでは、この本を読んで深く考えたり自分に問いかけたりするのは難しいでしょう。一方で、サッカーには興味がなくても、これまでに挫折を味わったり、思いどおりにいかない悔しさからもがき這い上がってきた経験がある人なら、自分自身の経験を踏まえながら想いを文字にすることができるでしょう。

    本に気持ちを寄せるのではなくて、自分の体験談に本を寄せる。これまで自分が経験した「あの時こうすればよかった」「今までで最高に嬉しかった」という想いを、読書感想文という文章の中に書き込むのです。

    毎年夏休み前になると、星の数ほどある本の中から自分が読めそうな本を探すって、とても大変なことですよね。しかも、それを読んで原稿用紙何枚にも及ぶ意見を書く。この一連の作業は、回数を重ねた小学校高学年や中学生の皆さんでも大変ですが、今年初めて読書感想文の宿題を持ち帰ってきた小学1年生のお子さんにはなかなか難しい。どこから、そして何から始めたらいいか分からない、読書感想文だからとりあえず本を読めば何とかなると思っていたのに一向に進まない、誰かどうにかして! ともがいている皆さん、ここにご紹介した方法で、まずは本を選んでみましょう。